
これは、あるサイトのトップページである。
あなたはこのサイトの異常さがわかるだろうか。
おそらく、一見しただけではごくありふれたポケモンサイトに見えるだろう。
しかし、注意深くすみずみまで見ると、サイト中そこかしこに奇妙な違和感が存在することに気づく。
その違和感が重なり、やがて一つの事実に結びつく。
それはあまりに恐ろしく、決して信じたくない事実である。
知人からの連絡
4月1日、知人のCさんから相談を受けた。
Cさんはポケットモンスターの強豪であり、自身の構築を発表する機会を求めていたのだという。
彼は毎晩遅くまでポケモンメディアを読み漁り、ついに理想的なサイトを見つけた。
生まれては消えてゆく数多のサイトの中で9年間の運営実績を持ち、寄稿者向けのサーバーも存在するなど、手厚い支援体制を持っており、内見に行ったところ、夫婦ともども好感を持ったという。
ただひとつ、記事カテゴリーに不可解な点があった。
それがこれだ。

一般トレーナー向けの下に謎のカテゴリがある。
毒された方向けとあるので、気軽には読めない。
レート上位勢に聞いてもよく分からないという。
寄稿する上で不都合はないが、なんとなく気味が悪いので私に相談しようと思ったらしい。

ウェブライターってそういうの詳しいでしょ?
ウェブライターをなんだと思ってるのか。
しかし、偶然にも私の知り合いにLさんという銀河統括局呪術課長補佐がいる。


私も「謎のカテゴリ」というオカルトチックな話に少し興味を持ったので、Lさんに相談してみることにした。
Lさんの推理



Lさん、お久しぶりです。



いえいえ、湿度計さん。
ところで、送っていただいたサイトのことですが……。



はい。サイト下部に謎のカテゴリがあるんですが、これについて何かわかりますか?



うーん……。
一つ言えるのは、これが意図的に作られたものだということですね。



意図的に……ですか?



このカテゴリは、必要ないふたつのタグによって区切られているんです。





「企画もの」と「対戦パーティ(狂)」。
これがなければ、サイトは普通ですし、検索性もよくなります。



サイトデザインを圧迫してまでわざわざこのカテゴリを作ったということは、このカテゴリが必要だったということです。



なるほど。なぜ作ったんでしょうか?



ポケモンは世界的コンテンツですから、ポケモンメディアはさまざまな人に読まれる必要があります。
サイトの裾野を広げるために、普通とは異なる読み味のカテゴリを作ったと考えるのが自然ではないでしょうか。



オカルト的な話ではないんですね。



そうですね。ただ……



え?



あの、ちなみにこのサイトって誰が作ったんですか?



30代の男性で、奥さんと子供がふたりいたそうです。
何か気になります?



いや、最初にこのサイトを見たときに、ずいぶん変なサイトだなって思ったんですよね。



そうですか?
謎のカテゴリ以外、特に気にならなかったんですが……。



私が変だと思ったのは、サイトの誕生秘話なんです。



誕生秘話を見てください。何か気づきませんか?



うーん……。あれ?





ルールが四つある。総合勢……?



そう。総合勢は五世代からの生き残りです。
シューターバトルの消滅を見て、人口の少ないルールが消滅するかもしれないという覚悟は決めていたはず。
どうしてルールの生存を前提に話をしてるんでしょう。



たしかに変ですね。



それにこのサイト、第九世代トリプルの記事もあるんですよ。





ほんとだ。



ジョークというには行きすぎてる。
「トリプルは復活するんだ」という意思を感じます。
そしておそらく、誰も掲載を止めなかった。





さまざまなカテゴリにトリプルの記事が配置されています。
こうまでして廃止されたルールの記事を読ませたかったのか……と。



たしかに……。変なサイトですね。
そうするとどうでしょう。このサイトには寄稿しない方がいいですか?



まあ、記事だけでは何とも言えませんが、私だったら寄稿しないですね。



そうですか……。
━━━━私はLさんに礼を言い電話を切った。
サイトを見る。
言われてみれば不思議なサイトだ。
想像を巡らす。過去のルールから出られない番人。トリプルバトルで遊ぶ運営。
他のサイトと見比べる。構築記事だけなら普通のサイトだ。謎のカテゴリがあることを除けば。
謎のカテゴリ。作られなかったローテーションバトル……。
本当にそうか?
そのとき、ある憶測が頭に浮かんだ。あまりにばかばかしい憶測。でも……。
謎の動画
私は再びLさんに電話をかけた。



もしもし、Lさん。たびたびすみません。



いえいえ。何か気づきましたか?



やっぱりカテゴリのことが気になって。
もしかして他の活動媒体と何か関係があるんじゃないかと思ったんです。
それでYouTubeを見てみたんですが……。



クソモンNo1決定戦が、謎のカテゴリの需要とぴったり重なるんですよ。
まるで二つの媒体を橋渡ししているみたいに。



ああ、たしかに……。



それで……まあ、これは素人のばかげた考えだとは思うんですけど、もしかして対戦パーティ(狂)って……通路なんじゃないでしょうか?



通路?



たとえばですよ。



対戦パーティ(狂)の記事に、YouTubeの動画につながる内容があったとします。
アブリボンの記事は、アブリー偽装アブリーに続いている。
すると記事を通って動画を見せられると思うんです。
運営はYouTube動画でマネタイズしたかった。
そしてカテゴリは、欲望を隠すために置いたんじゃないかと……思ったんですが……どうでしょうか……?



うーん……まあ、面白い考えではあると思いますけど……。



考えすぎですか……。



わざわざそこまでするかな……とは思いますね……。
━━━━私は急に恥ずかしくなった。なにを子供の妄想みたいなことを真剣にしゃべってしまったんだ。
話を切り上げようとしたその時、電話の向こうでLさんがなにやらつぶやくのが聞こえた。



動画…………いや、待てよ。
もしそうだとするとこのサイトは……。



え? どうかしました?



いえ、今の話を聞いてちょっとね……。
ところで湿度計さん。このサイトの運営には総合勢がいたんですよね。



はい。



総合勢ということは、かなりの強者が集っていたと考えられます。
総合勢、謎のカテゴリ、トリプル、そこにさっきの「動画」の話を合わせると、一つのストーリーが見えてくるんです。



ストーリー?



まあ、ばかげた話だと思うんですけど、聞いてください。
クソ考察



かつてこのサイトを運営していたのは総合勢。
彼らは幅広い知識と豊富な対戦経験、わかりやすい記事から人気を博す。



彼らはたびたびサイトにゲストを招く。
有名動画投稿者、ロバート山本さん、リアルポケモンマスター……。



彼らがサイトを気に入ったのを確認すると、メンバーに「合図」を送る。
メンバーは「あるもの」を持ってゲストのところへ向かい……
クイズで人権を奪う。



は!?え!?なんでそんな話に……?



まあまあ、これはあくまで私のクソ考察ですから。



緊張した状態では、まともに回答ができない。
やがてゲストは何も理解できないまま、人権を奪われる。
それを確認した運営は、「禊」を持ちかける。
つまりこのサイトは、一般的なポケモンサイトに見せかけた、人権を賭けたデスゲーム会場である。
そういう仮定が成り立つんです。



デスゲーム……って……。



まあ、あくまで私の妄想ですよ。
こう考えたら面白いよねってだけの話です。



ところで、人権を奪われた者は、「禊」をすることで人権を取り戻すことができるんです。





公開されている範囲ではクイズに出てきたポケモンでランクバトルをする程度ですが、もしゲーフリの偉い人に勝てば「禊」として消滅したルールを復活させることも可能なのではないでしょうか?



……!?



当然、ルールを減らす際には何らかの理由があったはずです。
しかし、消滅したルールの面白い記事がたくさん書かれているサイトを読んだ後なら、復活させたくなってもおかしくないですね。
━━━━大量の過去ルール記事。つい自分でも考えてしまうクイズ動画。ゲーフリの偉い人の自撮り研究。
Lさんの説明は、サイトのおかしな要素が回収されていくようだった。



そういえば…………。
話を聞いていた私は、このサイトについて調べていた時に発見したある画像を思い出した。



このサイトの事務所の間取りなんですが、これも何かのヒントにならないでしょうか?





こ、この間取りは……!



何かあるんですか!?



これもクソ考察になってしまうんですが……。



はい。



この事務所、窓がないですね。
日照権が侵害されている状態ですから、人権が奪われています。



そ、そんな……!
━━━━到底信じられないことだったが、この事務所も人権を奪うために作られたのだろうか。



それに、風呂とトイレなんですが……。



これは設置してあるから人権侵害には当たらないのでは?



いえ、よく見てください。





風呂にもトイレにも扉がないんです。
これでは設備があっても使用できません。おそらくここに招かれた人々の取れる選択肢はひとつ……。



NOGUSO…………?



深刻な人権侵害ですね…………。



あと入口が裏鬼門にあたる南西なのは呪術的によくないですね。



急に呪術師設定思い出すのやめてください
Lさんとの電話を終え、私はしばらくぼんやりしていた。
Lさんの話が本当だったら…どうする?
警察に届け出るか?
まさか。まともに取り合ってもらえるわけがない。
だいたい、総合勢が作った人権デスゲームサイトなんて現実離れした話、大の大人がなにを真剣に話していたんだ。Lさんは最初から私をからかうつもりだったのかもしれない。彼も言っていたが、ばかばかしい妄想だ。
もう考えるのはよそう。夕食の支度でもしようかと思ったその時、
電話が鳴った。
終幕



どうも、Cです!



Sさん! お久しぶりです。
実は今さっきまで呪術師のLさんと話してたんですよ。
ちょっと笑っちゃうんですけど、Lさんが言うにはあのサイトは……



あー、実はそれについてちょっと湿度計さんに謝らなきゃいけないことがあって。あのサイト、結局寄稿するのやめたんです。



え!? どうして!?



だって、リバティノートがあるから……。
Cさんは元気よく電話を切った。
彼が寄稿するのをやめた以上、もうあのサイトは私になんの関係もない。
忘れよう。追究したってしかたない。
私は第9世代シューターローテの考察記事を入念に丸めてゴミ箱に捨てた。
※この記事の内容はフィクションです。
この記事が消えてたらオモコロさんかリバティノートさんから怒られたんだと思ってください。
APPDATEは皆さんの寄稿をお待ちしています!!!!!!


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